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ここでは特徴的な症例について、一部をご紹介いたします。
※手術の写真を掲載しておりますので、苦手な方はご注意ください。
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尾側後頭部奇形症候群(Caudal Occipital Malformation Syndrome; COMS)

ヒトのキアリ奇形と犬のキアリ様奇形

キアリ奇形とは、小脳、橋、延髄の発生異常による先天的奇形で、小脳や脳幹の一部が大後頭孔を超えて脊柱管内に貫入した形態を呈する疾患です。
1891年、オーストリアの病理学者 Hans Chiariによって報告され、後頭蓋の脳の形態によって4つの型に分類されます。

Type Ⅰ : 小脳扁桃が大後頭孔から下垂して脊柱管内に陥入した状態
Type Ⅱ : 小脳扁桃に加え、小脳虫部、延髄、および第四脳室などが脊柱管内に陥入した状態
 いずれも大後頭孔を狭窄するのが特徴です。
Type Ⅲ : 水頭症を伴い、小脳が頸部二分脊椎内に陥入した状態
Type Ⅳ : 小脳形成不全

キアリ奇形は後頭骨頸椎移行部の骨奇形に関連して起こると考えられています。
キアリ奇形Type Ⅰでは、頸部脊髄内に液体が貯留する脊髄空洞症を伴うケースが多く、これは小脳の一部が頸部脊柱管内に落ち込むことにより、大後頭孔を狭窄して脳脊髄液(Cerebrospinal Fluid; CSF)の循環障害を生じ、脊髄実質内に水分が貯留して空洞が形成されると考えられています。

このキアリ奇形Type Ⅰに類似した疾患が犬でも報告されており、キアリ様奇形とよばれています。
発症機序もキアリ奇形Type Ⅰに類似していると考えられており、 症状は、振戦や斜頸、知覚過敏、四肢不全麻痺(特に前肢に強い症状を示す)、頸部の引っ掻き行動、発作など様々な症状が認められます。


尾側後頭部奇形症候群(Caudal Occipital Malformation Syndrome; COMS)とは?

ヒトにおける脊髄空洞症の原因には、キアリ奇形Type Ⅰに伴うものが多く、これによってCSFの循環動態異常を引き起こし、頸髄における脊髄空洞症を併発すると考えられています。
しかし、犬における脊髄空洞症にはキアリ様奇形が併発しているケースが少なく、後頭蓋窩の狭小化や延髄頸髄移行レベルにおける圧迫を示す所見が認められ、これによってCSFの循環障害が生じ、空洞病変が形成に関与していると考えられています。
犬のこのような病態をCOMSといい、小型犬(チワワ、ヨークシャー・テリア、ポメラニアン、トイ・プードル、パピヨンなど)での発症が多く認められます。
症状は、キアリ様奇形の症状に加え、顔面麻痺、頸部痛、旋回運動、側弯、頸部下垂や斜視など様々です。
診断には、上記の様な症状が認められた場合に、MRI検査が実施されます。
治療は、対症療法として浸透圧利尿剤やプレドニゾロン、プレガバリンの内服や、CSFの循環解除を目的として外科的治療も実施することがあります。
外科的療法には、大後頭孔減圧術(Foramen Magnum Decompression; FMD)や空洞-くも膜下腔シャント術(S-Sシャント術)が実施されます。
COMSのMRI所見 小脳の尾側圧迫所見と頸部脊髄空洞症所見が認められました。
手術顕微鏡による術中の様子(FMD)
術前と術後のMRI所見(Sagital) 頸部脊髄空洞症の改善が認められました。
術前と術後のMRI所見(Axial) 両側側脳室拡張の改善が認められました。
尾側後頭部奇形症候群(COMS)でお悩みの方はメールや電話などでご相談ください。


執筆担当:獣医師 初山
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