小滝橋動物病院 新目白通り第2高度医療センター お電話0359585512
ここでは特徴的な症例について、一部をご紹介いたします。
※手術の写真を掲載しておりますので、苦手な方はご注意ください。
小滝橋動物病院グループ全体の外科症例件数については、>こちらをご参照ください。

膝蓋骨内方脱臼(パテラ脱臼)

膝蓋骨とは一般的に「膝のお皿」と言われている膝の骨の一つで、大腿骨の滑車溝の上を滑走することによって膝関節の屈伸運動をスムーズにしてます。
この膝蓋骨が滑車溝から外れてしまうことを膝蓋骨脱臼と言い、内側に外れてしまう内方脱臼は小型犬に多く、外側に外れる外方脱臼は大型犬に多いと言われています。膝蓋骨脱臼の原因には外傷性と先天性がありますが、外傷性と比較して先天性の場合が多く、滑車溝が浅くなっていたり、大腿四頭筋の不正な配列に起因して成長に伴い、大腿骨や脛骨の変形が生じて脱臼をさらに助長します。
症状は様々で、無症状の症例から骨変形が生じて負重ができないほど重度の跛行を示す症例まで幅が広いため、重症度を診断する際にはSingleton分類によって以下の4段階に分類されます。

GradeI:膝蓋骨は滑車溝に収まっており、用手にて脱臼を認めるが、手を離すと再び滑車溝に収まる。
GradeII:膝蓋骨を用手にて圧迫するか、または膝関節を屈曲すると脱臼を認めるが、膝関節を伸展すると脱臼が整復する。
GradeIII:常に膝蓋骨が脱臼した状態で、用手にて整復しても膝関節屈曲時に再び脱臼する。
GradeⅣ:常に膝蓋骨が脱臼した状態で、用手整復が不可能。

治療方法は、GradeIIまでは体重制限や消炎鎮痛剤、サプリメントの内服などによる保存療法を実施し、GradeIII以上の場合に外科手術の適応とされています。しかし、現在ではGradeが低くても外科手術を実施した症例では疼痛の緩和、および歩様の早期改善を認めるなどの報告も出ております。パテラ脱臼を放っておくことで、年齢を重ねた時に症状が強く出たり(歩けない、とても痛がるなど)、膝の中にある前十字靭帯断裂を起こす場合もあります。そうなってからの手術は大掛かりとなってしまうケースが多いので、若齢のうちの手術をお勧めいたします。

本症例は両側膝蓋骨内方脱臼GradeIIIと診断されました。膝蓋骨が明らかに内側へ脱臼しております。
膝蓋骨内方脱臼の外科手術ではGradeに応じて主に下記の術式を組み合わせて実施します。

滑車造溝術
大腿骨の滑車溝が浅く、膝蓋骨が滑車溝に収まらない場合に滑車溝を楔状、またはブロック状に骨切りして滑車を深くする方法です。
膝蓋骨脱臼の症例の多くは滑車が十分に形成されていないため、外科手術の際にはほぼ必ず実施します。

内側支帯の解離
膝蓋骨の内側に付着している萎縮した内側広筋(大腿四頭筋の一つ)や縫工筋、内側関節包を切開して解離させることでを内側への緊張を解除することが目的です。

外側支帯の縫縮
膝蓋骨を整復した段階で、外側の筋膜や関節包が余剰となるため、切除して縫合することで膝の軟部組織の安定性を高めることが目的です。

脛骨粗面転位術
膝蓋骨内方脱臼では膝蓋靱帯の終止部が正常と比較すると内側へ終止しているため、脛骨陵を骨切りし、外側へ転位させることで膝関節の安定化を維持することを目的とした方法です

上記以外にも骨の変形が重度の場合には脛骨および大腿骨の骨切りをして矯正したり、筋間から大腿骨へスクリューを挿入して大腿四頭筋を制動することで再脱臼しにくくさせる方法もあります。
術後は術前と比べて負重が弱くなることも多いですが、その後1〜2ヶ月かけて術前より良い状態になるケースがほとんどです。足の着きがイマイチな場合にはリハリビテーションで筋肉増強を行う場合もあります。

執筆担当:獣医師 初山
滑車造溝術(ブロック状造溝術)
滑車造溝前
滑車溝が十分に形成されておりません
滑車造溝後
軟骨を切り取り、やすりをかけて十分な滑車溝を形成しました
立派に発達した縫工筋前部です
外側の関節包と大腿筋膜張筋などを縫合して縫縮します
脛骨粗面転位術 転位後はK-wireを刺入して固定します
術後のレントゲン写真
膝蓋骨内方脱臼(パテラ内方脱臼)でお悩みの方はメールや電話などでご相談ください。


膝蓋骨内包脱臼の術後5日目の歩様状態です。早い子だと次の日から負重可能となります。




パテラの手術をして14日後の抜糸時の様子です。


執筆担当:獣医師 初山
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