ここでは特徴的な症例について、一部をご紹介いたします。
※手術の写真を掲載しておりますので、苦手な方はご注意ください。
小滝橋動物病院グループ全体の外科症例件数については、>こちらをご参照ください。
TPLOによる前十字靭帯断裂の手術(Tibial Plateau Leveling Osteotomy・脛骨高平部水平化骨切り術)
前十字靭帯とは後肢の膝関節の内部にある太い靭帯で、歩行や起立する際に最も重要な役割を担っている靭帯です。犬は人と異なり常に後肢を曲げた状態で起立しており、膝の骨格的に人よりも負荷がかかりやすい状態です。特に脛骨のTPA(脛骨高平部角)と呼ばれる角度が高いほど前十字靭帯に負荷がかかりやすくなっています。
そういう形態学的な特徴などから、犬や猫はジャンプしたり、転んだりという簡単なきっかけだけでも、前十字靭帯が切れてしまうことがあります。前十字靭帯が断裂すると負荷がかけられず、挙上や跛行といった症状が出ます。同時に半月板という軟骨を損傷することもあります。
断裂した前十字靭帯は自然に戻るということはなく、手術による外科治療が必要になるケースがほとんどです。手術には人工靭帯により固定する方法(ラテラルスーチャー・Flo法)やTPLO(脛骨高平部水平化骨切り術)という方法があります。近年ではTPLOの方が機能回復が良いという報告が多く、TPLOを行う症例が増加してきています。
TPLOはTPAを減らすことで靭帯が断裂した状態でも負重を可能にする、機能的安定化術という方法です。特殊なサジタルソー(ノコギリのようなもの)で骨を円形に切断し、TPLOプレートと呼ばれるロッキングプレートで固定します。
手術前の患肢です。下の脛骨という骨が左側に飛び出ています。体重をかけようとすると脛骨が飛び出てしまい、力が抜けて足をついて歩くことができなくなってしまいます。
わかりやすく、矢印をつけると・・・大腿骨と脛骨のラインがずれてしまっているのがわかります(矢印)。また、脛骨の角度(TPA)も高いです。
術後です。大腿骨と脛骨のラインが合っているのがわかります(矢印)。また、脛骨の角度(TPAといいます)が水平に近づいているのがわかると思います。有意にTPAが減少しているのがわかります。これにより、負重をかけても脛骨が前方に飛び出なくなり歩行が可能となります。この症例は術後3日ほどで患肢の負重がでてきており、1ヶ月ほどで走るくらいまで回復しています。
最近は5kg以下の症例が増加しています。その要因の一つに膝蓋骨内方脱臼が関与していると考えられます。膝蓋骨内方脱臼を併発している場合には同時治療が必要になることがあります。
2〜3kg大の子には更に小さい特殊なFixinというプレートを用います。
さらに、両側で断裂してしまうことも多いです。
様々なサイズの骨があり、様々な体重の犬がいます。それぞれにあったプレートやスクリューが必要なので、術前に細かく計画して手術を行います。
20kgの雑種犬です。両側の断裂でした。
20kgの雑種犬、反対側です。
黒ラブです。
40kgのバーニーズ・マウンテン・ドッグです。
18kgのシェトランドシープドッグです。TPAは32°でした。
12kgの雑種犬です。TPAは27°でした。
15kgの雑種犬です。
両側を手術したシェルティーです。
TPAが高いために、回転距離が長くなったフレンチ・ブルドッグの症例です。TPAが高い場合プレート破損や骨折のリスクが高くなるため術後も要注意となります。
20kgの柴犬です。内側の関節包や軟部組織の肥厚が厚くプレートを曲げないと入らなかった症例です。
ダックスの血統が入った犬のため、骨の形状が特殊です。また、肥満度が高すぎたためプレートを大きくする必要がありました。
トイプードルのTPLOです。以前反対側をラテラルスーチャ(Flo法、ECR法)を行っています。
前十字靭帯断裂でお悩みの方はメールや電話などでご相談ください。
執筆担当:獣医師
磯野
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